某会員制の大型スーパーでの出来事。
そのお店は、出入り口で写真付きの会員カードを見せないと入店できないシステムなので、会員じゃない場合は入会するか、会員の同伴者としてではないと買い物ができないお店だった。
なので出入り口には間違って非会員が入店しないように、何人かの店員が一人一人厳しくチェックしている。
何もここまでしなくてもとか、スーパーで買い物するのに年会費を払って会員にならないといけないの?と若干の疑問は感じていたけど、彼らも仕事だし、高品質の物をお得に買えるからと、割り切って会員を続けていた。
だがそんなある日、お店の入り口で私は嫌な光景を見てしまった。
何も知らないお婆さんが入店しようとしていた所を、見るからに気の強そうな女性店員が高圧的に注意していたのだ。
しかもその店員、
「ここがどんな店か分からないんですか?」
とお婆さんを見下す始末。
お婆さんは泣きそうな顔になっていた。
いくら何でもこれは酷すぎる!一言いってやらないと気が済まない。と意を決した私は2人の前へ向かおうとした。
すると…
「ちょっと君。その態度は何なんだ?」
と、1人の男性が私よりも早く店員に注意してくれた。
「失礼ですが、私はこの人が不正を働こうとしたのを止めただけですよ。不正を取り締まるのがこの店の規則なんです」
と冷たく言い放つ店員。
その瞬間、男性はサッと表情を変えてこう怒鳴った。
「そんな規則を定めたつもりはない!」
そこでタイミングよく騒ぎを聞きつけた店長らしき人が出てくると、その男性の顔を見るなり慌てた様子で「お疲れ様です」深々と頭を下げていた。
どうやら彼は本社の上層部の方だったようだ。
「君は彼女にどんな間違いを教えたんだ!この仕事は会員様を気持ち良く迎える役目であって、誤って入店した非会員様を不正者扱いするワケじゃないぞ!」
と店長に一喝する男性。
ヤバいという表情で顔を青ざめる店員。
そして、男性はお婆さんに
「大変申し訳ございませんでした。全て私の教育不足です。後日改めてお詫びをさせて下さい」
と謝罪していたが、
お婆さんは
「もう大丈夫ですから。今度は会員になってから買い物しますね」
と笑っていた。
それから私は何度かその店で買い物をしているが、
あの日以来、例の店員は見かけていない。