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娘が学校から帰宅後、暗い顔をしたまま 何も言わず自分の部屋へ籠もった…

結婚して20年以上。
家族を大切にしてくれる夫がいて、2人の子供達も良い子に育ち、
平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。

夫の浮気が発覚する迄は。

事の発端は、高校2年の娘が学校から帰宅後、暗い顔をしたまま
何も言わず自分の部屋へ籠もったまま出て来てくれなくなった所からだった。

心配した私は何度も娘の部屋のドアを叩きましたが、
「何でもない」と言ったまま出て来てくれません。
そこでタイミング良く息子が大学から帰って来たので、
私は事情を説明した後何とかして娘から理由を聞き出してもらうよう頼みました。

そして息子が娘の部屋へ向かってから数十分後。
カチャリという音と共に息子が部屋から顔を出し、手招きしながら私を呼んできました。
部屋へ入った私は驚いてしまいました。
滅多に涙を見せないハズの娘が、目を真っ赤に泣きはらしていたからです。

私「一体何があったの?学校でイジメられたの?」
娘「違う…」
私「なら理由を教えてはもらえない?お母さんが出来る事なら協力するから、ね?」

私がそう言った途端、娘は泣き叫びました。

娘「お母さん!私は許せない!お母さんを裏切ったアイツらを許さないから!」

(アイツら?裏切る?この子は何を言っているの?)
娘の言葉の意味が分からず戸惑いを隠せない私を見て、
息子が深刻な表情でこう言ってきた。

息子「父さんが…浮気している」

私は息子のあまりにも唐突な発言にまず驚き、その直後から憤りを覚えました。

夫は真面目を絵に描いたような人間だったし、
もちろん夫婦仲も良く、お互いを誰よりも信頼し合ってきたつもりでした。
確かに考えてみればここ数年の夫は、やたら家を空ける機会が多くなってました。
でもそれは今、夫が所長を務めていた支店が不況で閉鎖して本社勤務に吸収され、
仕事量や出張が増えたからだと信じていました。
だから夫が浮気だなんて、冗談にも程があると思ってしまったのです。

私「馬鹿を言いなさい!そんな冗談は少しも面白くないわよ!お母さん怒るわよ!」

大人げないと思いながらも、私は息子の肩を揺さぶり本気で怒鳴ってしまいました。
そんな私を見た息子は悲しそうな目をしていました。
息子「母さん、いくら俺でもそんな冗談は言わないよ」
そう言うと息子は泣いている娘に目配せをします。
娘「お母さんコレを見て…」
嗚咽を漏らしながら、持っていたスマホを渡す娘。

スマホを見た瞬間、私は全身の血の気が一気に下がって行くのを感じました。
そこに写っていたのは、若い女性と寄り添いながら
アパートの中へ入って行く夫の姿だったからです。
暫くの沈黙の後、娘がポツリポツリと説明してくれました。

学校の帰り、寄り道をしようと思った娘が
最寄り駅から数駅離れた街で買い物をしていると、
会社に行ってるハズの夫が歩いてたそうです。
そして娘が声を掛けようとした瞬間、少し離れた所から
若い女性が夫の名を呼びながら駆け寄ってきたと言うのです。
嫌な予感がしつつ、気になった娘は2人を尾行。
そこで娘は目を疑う光景を見てしまったのです。

軽く抱き合って手を絡ませながら歩く姿。
近くの喫茶店でイチャイチャしながらお茶を飲む姿。
スーパーで仲良く買い物をする姿。
そして彼女のアパートらしき所へ入って行く姿。

娘の口から昼ドラ顔負けのような証言を次々と聞かされましたが、
私はなかなか事実を受け入れられませんでした。

すると、
娘「2人が抱き合った時点でお父さん達を突撃しようとしたけど、
私は頭が悪いからお父さんに言いくるめられるかもしれないと思った。
だからお兄ちゃんに相談しようと思って写真だけ撮ってきたの。
いざという時にお母さんに有利になるだろうから」

娘が撮ってきた写真は、あの1枚だけではなく、
現場を証明できるくらいの枚数がありました。

娘は17歳です。
まだまだ多感な時期だし恋にも憧れる年頃なのに、
自分の父親のあんな姿を見てしまったなんて…。娘の気持ちを思うと胸が痛みます。
それでも娘は何かの役に立つからだろうと私の為に行動に移してくれたのです。
そして息子も、自分が責められる事を承知で私に報告してくれたのです。
そんな2人の気持ちが伝わり、やっと私は我に帰りました。

私「ゴメンね!2人とも疑がったりして本当にゴメンね!」
私は息子と娘を抱き締めました。
そして、ひとしきり泣き明かした後、そのままリビングで家族会議を始めました。

娘「お父さんが帰ってきたら、この写真を見せて問い詰めようよ!
もしくは今から女のアパートへ殴り込みに行こう!」
気持ちが落ち着いたのか、いつもの勝ち気を取り戻した娘。

そんな娘に対して、
息子「アホかお前は。今そんな事したら面倒な事になるぞ。ちゃんと計画を立てるんだ」
と冷静な息子。

そして私はというと、
この期に及んでまだ夫に対する想いを消化できずにいました。

情けない事に、私は事実を知らされても夫を好きな気持ちは消えませんでした。
20年以上も一緒に暮らしていたのだから仕方はないのですけどね。
このまま夫婦関係を続けていくか、ケジメを付けて離婚をするか。
一体私はどうすべきなのか…

因みに私は特殊な資格を持っていて夫よりも年収が高いので、
子供を育てて行く上で経済的に困る事はありません。
だから後は私の気持ち次第だったのです。
結局その日は、話がまとまるまでは夫に黙っていようと言う事で会議は終わりました。

それから数日の間、私は動揺を隠しながらも何事もないよう夫と接してました。
あまりにも平然としている夫を見ていると、
あの浮気は嘘なのではないかとまで考えてしまいます。

だが息子と娘は違いました。

娘は夫の顔を見ると気分が悪くなってしまうようで、
ほとんど口もきかず部屋へ入ってしまいます。

息子は娘と私の手前、普通に過ごしてはいましたが、やはり元気がありません。
驚く事に、夫はそんな子供達の様子を少しも気に止めるそぶりも見せませんでした。
このままでは子供がおかしくなってしまう。そう分かっているのに未だに決断ができない。

そんな自分に苛立ちを感じていた頃、ある女性が私の元を訪ねてきました。
彼女の名前はAさん。
夫が所長をしていた会社の部下で、会社のイベントや他の部下と一緒に
家に遊びに来た事もあったので顔は知っていました。
この時私は”まさかAさんまで夫の愛人だと言うのでは”と身構えてしまいました。

「突然お邪魔してしまい申し訳ありません。実は折り入ってお話したい事がありまして」
「いえ、あの…一体何があったんですか?」
するとAさんは緊張した面もちでこう切り出してきました。

「単刀直入に言います。ご主人は会社の金を横領していました。証拠もあります」
「お、横領!?」
予想外の展開に思わず変な声が出てしまう私。

彼女の証言によると、夫が所長時代にAさんは夫の秘書のような役割をしていました。
が、新らしく入社してきた女性社員がその仕事を引き継ぐ事となり、
その辺りから、明らかに不自然な計算書や誤魔化したであろう領収書が目に入ってきたそうです。

そして彼女に指摘した所、何故か夫から「新人を虐めるな」とAさんが怒られてしまい、
それ以降Aさんは2人から嫌がらせをされ続け、挙げ句の果てには
本社へ吸収される際に行われたリストラの対象者にされてしまったそうです。

幸いAさんは優秀な方だったので、無事に本社へ行く事ができて、
代わりに例の女性社員が辞めたのだとか。
それでも納得のいかなかったAさんは、本社に吸収されるまで少しずつ証拠を集め、
時が来たら告発をしようと考えていたのだそうです。

「Aさん、主人のせいで大変な目に遭わせてしまったのですね。本当に申し訳ありません」
私は情けない気持ちでいっぱいになりながらAさんに謝罪しました。

「いえ、謝らせるつもりで来た訳ではありません。
奥様には本当に良くしていただいたから、事が大きくなる前に知らせておこうとしただけです。
恐らくご主人の処分は大変厳しい物になる筈ですから。それに…その…」
と、Aさんはまだ何か言いたげな雰囲気を出していたのを見て、察しがつきました。

「主人とその女性社員が不倫関係にあるんですね?Aさん」

Aさん「何故知ってるんですか!」と、すごくビックリしていました。
そして私はこの件で主人と離婚する決心をしました。

それから1ヶ月程の間は新居探しをしたり、
弁護士さんや家族3人を交えて色々話し合って離婚の準備を進めて行きました。

そしてある夏の日の夕飯の最中の事です。
夫「また明日から暫く会社に泊まり込むから。何かあったら携帯に連絡してくれ」
と言いました。
すると、いつもなら返事しかしない息子が、夫に挑発を始めたのです。

息子「て言うかさ、なんでいつも携帯なの?普通なら会社って言うよね」
夫「たかが家族の用事の為に会社の電話を使う訳にはいかないだろう」
息子「へ~。父さんてそんなに堅い考えだったっけ?
それと家族の事を”たかが”扱いだと思ってたなんて初耳だよ」
夫「なっ!?社会人にもなってない癖に分かった様な言い方をするな!」

耳まで真っ赤にし、明らかに動揺した夫は、
息子に持っていた箸を投げつけて席を立ちました。

すると、今度は無言で食事を続けていた娘が夫にこう語りかけたのです。
「お父さん、今でも私達の事を愛してる?」と。
夫は一瞬口を開きかけたが、何も言わずにそのまま書斎へ入って行きました。

これが家族で過ごした最後の夜でした。


夏休み中だったのを幸いとし、
翌日から私達3人は急いで荷物をまとめて新居へ引っ越しを始め、離婚の準備に取りかかりました。
まずは弁護士さんには夫の会社まで出向いてもらい、私は実家と義実家へ赴いて、
それぞれ浮気の証拠を見せた上で離婚をする旨を伝えました。
もちろん愛人の家族の方にも連絡を入れる事も忘れません。
因みに愛人の実家の住所は、Aさん協力の元で入手できました。

夫からは激しい電話攻撃をされたり、職場に乗り込まれましたが、
一切無視した上、弁護士さんから接近禁止命令を出してもらったら大人しくなりました。

それから半月後、実家・義実家・愛人一家と
当人3人と弁護士を交えての話し合いが始まりました。

ずっと前から、夫は私の方が収入がある事等に負い目を感じていた。
だから私に負けないよう必死に働いてきたが、全て上手くいかなくて
自暴自棄になっている所へ愛人が入社してきた。
そして私と違い、儚げで自分を頼ってくれる彼女に心が動いてしまい、
そのまま関係を結んでしまった。自分には彼女が必要だ。
これが夫の不倫の理由と今の気持ちだそうです。

そしたら愛人、夫のその言葉に感激したらしく、私に向かってこう言い放ちました。
「彼がこうなってしまったのは奥さんが悪いと思います。
それに彼は言ってましたよ?アナタはもう女じゃないって」
愛人の家族はすぐに彼女を殴って無理やり土下座をさせてましたが、
許すつもりはありませんでした。

そして長い話し合いの結果。
夫から500万、愛人から300万の慰謝料を本日中に即金で支払ってもらう。
離婚後の親権は私が貰い、義両親のみに顔を見せる。
という事で離婚届けに印鑑を押しました。

それと時同じくして、Aさんは元夫の横領を会社に告発し、
元夫は多額の賠償金を払わされ懲戒解雇されたそうです。
義実家からも勘当され、今は愛人と共に
相当悲惨な生活を送っているらしいですが、関係ありません。
私達家族3人は新しい生活をスタートしたばかりですから。

まずは貰った慰謝料を使って、子供達の心の傷を癒やす為に
豪華な旅行へ行こうかなと考えています。

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taka:

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