友人が公園でギターの野外演奏をしたときの話です。
演奏を終えて、おひねり入れの紙コップの中身を財布に入れ、荷物をまとめて駅に向かって歩き出した時、公園住人(ホームレス)のおじさんが近づいてきました。
「近くに女が住んでるんだ。会いにいきたいけど小銭がなくて。電車賃貸してくれない?」
電車賃貸して、というのはお金をせびりたいときの常套句で、もちろん返してもらえることはありません。
友人もそれを知っているので、無視するだろうと思っていました。
しかし友人は
「いくらいるの?」
「240円?」
とか会話しながら、財布からおひねりでもらった小銭を数えて渡してあげました。
それから友人がおもむろにおじさんの肩に手をおいて、語り始めました。
「女には気をつけなさいね。それからね…
あなたは今はそういう生活をしているけど、いつまでもそういう人生じゃないからね。
日本刀を作るところ、見たことある?
熱い火で焼かれて、冷たい水に入れられて、また焼かれて、繰り返しますね。
でも最後に立派な刀になる。
あなたも、いろいろあるだろうけど、最後にはよくなる」
そして、じゃあね、といって立ち去りました。
おじさんは、ポカーンとその場に立って見送っていましたが、やがて走り寄ってきて、
「いい話を聞きました。そんな話をはじめて聞きました。ありがとうございました。
ありがとうございました・・・・」
みると、そのおじさん、なみだ目でした。
ちなみに友人は外国人です。
外国人から日本刀の作り方で説教されるとは、おじさんもめずらしい体験したと思います。
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