私が住んでいるのは三大都市のひとつの都市なのだが、家は自営業で普通の家と比べたら多少大きい家で、近所でも有名だ。
特に祖父母の近所付き合いがかなりよく、バスに乗っていたり、すれ違うだけであいさつされたり、喋りかけられたりする。
私は国公立大の医学部看護学科の1年で、祖父母の友人、ご近所さんはほとんどの人が知っている。
ある日、大学が休講だったため昼過ぎにバスに乗っていた。
一人席に座り外を眺めていると、私が乗車したバス停の次のバス停(次のバス停も同じ学区)で50代のBBAが乗ってきた。
優先席は空いていたが、そのほかの席は空いていなかったため私の目の前にBBAが立った。
しばらくそのまま乗っていると、あるバス停で20代の若い女性が乗ってきた。
そのころには優先席も埋まり、立っている人も4.5人はいた。
当然その女性も吊革につかまりバスが発進した。
私はその女性のバッグにマタニティーマーク(おなかの中に赤ちゃんがいますと書かれたタグ)がついていることに気が付いた。
見た目はほとんどお腹は膨らんでいないため、ぱっと見では妊婦とはわからない。
妊婦に席を譲るのは当然だが、今普通に席を立てばBBAが座るのは目に見えていた。
そのため背負っていたリュックを座席に置いたまま立ち上がって女性のもとへ行き声をかけた。
私『すいません、あそこの席なんですけど、よければ座ってください』
女の人は最初はびっくりした顔をしたけど笑顔でありがとうと言った。
置いてあったリュックをどかし女性が座ると、私はBBAの横に立った。
するといきなりBBAが大声で怒り始めた。
BBA「あなた、この女性より私の方が歳がいってるの分かっててなんで私に譲らないのよ!!」
私も女性も目が点になった。
そして女性が気を使ってBBAに席を譲ろうと立ち上がるのでそれを制止するとさらに怒り始めるBBA。
BBA「どういうつもり!?なんて非常識な子なの!!あなた〇〇の家のお嬢さんね!!」
どうやら祖母の知り合いだったらしい。
私がそうですけど、と答えるとニヤリとした。
BBA「まさか〇〇のお嬢さんがこんな子だったなんて、とんだ恥さらしね。〇〇もかわいそうだわ。それにあなた△△大学の看護学生でしょ?大学にも言いつけてやる。看護学生がこんなことして許されるわけないものね」
とまあ勝ち誇ったような顔で、いやだったら謝れと言ってくるBBA。
ここまで黙って聞いてればまあぺちゃくちゃよく動く口。
フンとふんぞり返っているその態度にものすごくはらが立った。
私『お言葉ですけど、女性のカバンを見ましたか?あ、もしかしてご存知ありませんか?
これはマタニティーマークといっておなかに赤ちゃんがいる妊婦がつけているタグです。』
BBA「だっておなか膨らんでないじゃない。嘘よ嘘。それぐらいわからないなんて本当に看護学生なの?」
私『お腹の膨らみ具合は関係ありません。
男の子だとあまり膨らまない人も多いんです。それにお腹があまり膨らまない妊婦は流産しやすい。
妊婦よりあなたを優先しろというのですか?
先ほど乗ってこられたとき優先席が空いていたのに座らなかったのにですか?
もしバスが急停止した拍子に妊婦さんが倒れられたらどうするのですか?
それとも胎児を殺したいのですか?」
ここまで言うとBBAの顔は真っ赤。
まあそりゃ恥ずかしいだろうな~、
ご近所の方かなり乗ってると思いながらさらに追い打ち。
私『大学にいうのは構いませんが、私は医療従事者の卵として間違った行動はしていませんよ?
あ、思い出した。あなたのお孫さん◇◇大学を中退されたそうですね、なんでも単位が足りなかったとか。
この間私の家の前で深夜にバイクをぶんぶん吹かしていたので注意していただけますか?迷惑なので」
実はBBAの孫と私のいとこが同じ年で1年上のため知っていた。
◇◇大学は偏差値BFの超おバカ大学。名前書けば受かるとか言われてる。
ちなみにいとこも国立大学の文学部にいるため、
BFの大学を中退した孫しかいないBBAに悪く言われる筋合いはない。
私『すいません、優先してお座りになりたかったのですよね?』
私はそう言って高校生の子に代わってくれと声をかけた。
するとさすがに恥ずかしくなったのか結構ですと言って、すぐさま降車ボタンを押して降りて行った。
そのあと私はバスの中で、乗車していた方たちに
「お見苦しいところをお見せし、お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした」
と頭を下げると車内から拍手が沸き上がった。
ちなみにその話は祖母の耳にも入り盛大に怒られた。
祖母はお寺の子だったため、私も厳しく育てられ常識だけはあるつもりだ。
間違ったことはしていないが、やりすぎだと言われました。
妊婦にも感謝の言葉を言われ、
「流産しやすいのは事実なので気をつけてくださいね。元気な赤ちゃんを産んでください」
と言って自分も次のバス停で降りた。
BBAはそれから祖母の顔を見るとペコペコして去っていくそうだ。
近所にもうわさが回ってちょっとかわいそうだったかな、とも思うが内心ざまあと思っていたり・・・。