もうニ十数年前のことだが、大学に入ったばかりの5月に父の会社が倒産した。
入学金と1年前期の授業料は払ってあったが、仕送りは一切ストップ。
中退して働こうとしたら、両親は
「頼むから大学は卒業してくれ」
と。
自分たちのせいで私が大学に行けなかった、ということにはしたくないんだなーとちょっと思ったけど、景気の悪い中、父が苦労していた事は知っていたから文句も言えず、すぐに居酒屋のアルバイトを決めた。
大学の授業のあと、毎日18:00~23:00過ぎまでバイト。
九州のド田舎で時給が安かった(600円未満)から、毎日バイト行かないと生活できない。
入学してすぐ入ったサークルは退部した。
以来、毎日授業とバイトだけの生活。
長期の休みは昼間に別の肉体労働系バイトを入れて、試験前にバイトを減らす分の蓄えとか、授業で使う教科書代を稼いだ。
食事は居酒屋のまかないと、汚い話だけど、バイト先で手付かずで残った料理を、洗い場のおばちゃんがラップで包んで持たせてくれた。
田舎の駅弁だけど国立だったから、よほどひどい成績でない限り授業料免除の申請が通るのが本当にありがたかった。
今考えれば奨学金をもらうという手もあったんだけど、当時は
「奨学金というのは病気や障害があって困っている人がもらうもの」
と思い込んでた。
実際は奨学金でクルマ買って遊んでるクラスメートとかいっぱいいたんだけど。
1年もすると…
そういう生活にも慣れてきたけど、自分の働いてる店で同じ大学の同級生のコンパがあって、同級生がトイレにまき散らしたゲロを掃除したときは、さすがに
「なーんでこんな事になってんだ」
と泣けてきた。
そういう生活を4年弱続けて、なんとか卒業した。
サークルもコンパも旅行もなし。
遊ぶヒマがないもんで友達もほとんど出来なかった。
両親は褒めてくれたが、4年間の貧乏で、自分の性格ははっきり歪んだ。
ゆとりがなくなって冷酷になった。
就職してからも他人とのコミュニケーションが苦手で、人を信用しないよね、とよく言われた。
苦労は金を出してでもしろ、というけど、生きる上でゆとりってやっぱり必要だわ。
大学時代、もう少し楽しく過ごしていたら、もうちょっと違った人間になれていたんじゃないかと今でも思う。