スーパーにリンゴが並ぶ時期になると思い出す修羅場
兄嫁が急死した。ちょっと買い物に出た時に居眠り運転の車に引かれ(歩道に乗り上げてきたらしい)
ほぼ即死。
知らせを受けて両親や兄弟が兄の家にかけつけた。兄家は両親と別居。兄嫁の実家は飛行機の距離で
到着は翌日になるという。
兄は病院だの警察だのにいって戻ってきたのが、夜遅く。悄然としている兄に 両親が勝手がわからないなりに
何かたべさせようと台所をごぞごぞしていたら、ホールのアップルパイがあった。
多分兄嫁が作ったものだと思う。よくケーキだなんだと手作りしていたし。
母が「なんかケーキがあるから切ろうか?」と兄に声を掛けたら、それまで黙っていた兄がいきなり
そのアップルパイの皿を抱え込んで うめき声のようなものを上げてうずくまって泣き出した。
兄のこんな姿はみたことがない。
傍から見れば異様な光景に見えるだろうが、兄にどう声を掛けたらいいのか、本当に辛かった。
後日聞いたところによると、パイを焼き上げて、荒熱を取っている間に「ちょっと買い物」といって
兄嫁がでかけて事故にあったのだという。
パイのほうは、「せっかく作ってもらったから腐らせるのもいやだ」と兄が言うので翌日
兄嫁のご両親が到着した時に、切り分けて皆でいただきました。
胸が詰まって味はそんなに覚えてない。ただなんとなく甘しょっぱい味がした気がする。
その後兄は料理上手な兄嫁がいなくなって激ヤセして、一時期本当に周りが心配してたけど、最近おちついてきた。
アップルパイに罪はないが、その後もなんとなく私もアップルパイを見ると物悲しさを感じてしまう。
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