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会社から帰るとポストに差出人不明の封書が。『劇場で会いましょう。僕が誰かはその時まで内緒』→結果…

5年ぐらい前、私がまだ20代の頃の話。
当時、私はアパートで独り暮らしをしていた。

ある時、会社から帰ってくるとポストに一通の封書が入っていた。
差出人の名は書いて無くて、中にはある有名な舞台のチケットと手紙が入っていた。
手紙はいわゆるラブレターで、私への思いが綴られており、
「劇場で会いましょう、僕が誰かはその時まで内緒、あなたが知ってる人間です、きっとビックリするでしょう」
みたいな事が書かれてあった。

その頃私には彼氏がいたし、相手について全く見当がつかなかった。
また、ちょうどその少し前に、アメリカだったか忘れたけど、懸賞に当選しました!と野球観戦チケットを送って、当日留守中に空き巣に入るという事件の話を聞いたことがあったので、気持ち悪くて行かなかった。
もし私の知ってる人なら、後日誰か分かった時点で謝ればいいし、まともな人なら警戒する気持ちも理解してくれるだろうと甘く考えてた。

しかし、その考えに反して観劇日の翌日から脅迫じみた手紙が入るようになってしまった。
「何故来なかった、馬鹿野郎、スカしやがって、ふざけんなよ」
と、最初の紳士的な文面とは正反対のものだった。

当時私は携帯電話を持っていなかったのですが、会社から帰宅すると、玄関ドアを閉めたタイミングで電話が鳴る。
そして受話器をあげると切れる。
ただ、手紙も電話も毎日じゃなくて不定期。
少ないときは週1ぐらいだけど多いときは週3~4回のときもあった。

そういう事が続いて3ヶ月ほど経って、さすがに気持ち悪いので引っ越しをした。
しかし、やっと治まったかと思ったのもつかの間、一ヶ月もすると又同じ事が始まった。
さすがに今度は無言電話は無かったけど、宛名のない直接投函されたらしい封書がポストに入れられるようになったのだ。
明らかにあとを付けられて家を探られたのだろう。
そう考えると分かり怖くなって、手紙を持って警察に相談に行った。

しかし警察では
「そういうのは無視が一番効果があるんです。相手にされないと分かると止めますよ」
と何の解決にもならないアドバイスをされた。
そのうえ
「ひとり暮らしの女性は寂しさのあまり何でもないことをこじつける傾向もありますから」
とまるで私の妄想かのように笑いながら言われた。
まだストーカーなんて言葉が一般的ではなかったし規制法もなかった時代だった。
しかし、警察は味方になってくれないのかと落ち込んだ。

もう一度引っ越そうかとも思ったけど、その頃彼と結婚話が出ていたので、彼とも相談して引っ越しするより一旦実家に戻ることにした。
私の実家は同じ県内だけど、県境に近い田舎で通勤が不便。
でも安心には変えられないと思った。

しかし、修羅場はその直後に突然起きた…

仕事が終わって会社を出て駅に向かう途中で
突然ヒョロッとした男が目の前に立ちはだかった。
避けようとしたらその方向を塞ぎ、逆方向に避けようとしたらまた塞ぐ。
何か言うでもなくジッと立ち塞がっていた。
私よりずっと背が高いのに顎を引いて見上げるような感じで睨んでくる。
(上手く表現できないけど分かるかな)
それで「あの犯人だ」と思った。
でも全く知らない人だった。

「何故来なかった」
とボソッと言われた。
一瞬何を言われたのか分からなかったけど、少し考えて一番最初の
あのチケットのことだと分かった。
しかし、どう言うふうに答えればいいのか分からなくて言葉が出なかった。
帰宅ラッシュの時間で回りに人が沢山いたから、怖いとは思わなかったけど
なんかヤバいと思った。
それで少し大き目の声で
「すみません、どいてくれますか!」
と言ったら、回りの人が私と犯人の方に注目するような感じになった。
それでビックリしたんだと思うけど、犯人が走って逃げて行った。
そして私の目の前で車に跳ねられた。(生きてます)
冷たいと言われるかも知れないけど、私には関係ないと思ってそのまま帰った。

こんなことになって、いくらなんでもこれで終わるだろうとも思って、
私としてはホッとしてた。
だけどその様子を同じ会社の同僚が見てたらしい。
やがて、
「(同業会社名)のAさんと私が路上で痴話喧嘩してて、Aさんが車に
跳ねられたのに知らん顔して帰った~」
という噂が流れた。
そう、犯人のAは勤務先の同業者の営業マンだったのだ。

うちの会社は、年1回同業同士の対抗スポーツ大会がある。
その時に一言二言言葉を交わしたことがあったらしいんだけど、大勢の人がいる中で
私の方は全く覚えていなかった。
言い訳するようだけど、私は割と人の顔は覚える方だ。
だけどAのことは本当に全く覚えていなかった。
うちの会社にもその後何度か仕事で来た事があったそうだけど、
私は人事部にいたので会社で顔を合わすこともなかったはずだし。

もちろん噂は否定しまくったし、こちらが被害者だってことも訴えた。
でもどこまで信じて貰えたのかは分からない。

そしてもっとショックだったのは、この件で彼氏との結婚が破談になったこと。
正式に婚約はしてなかったけど、彼のご両親にもご挨拶を済ませ
結納の日取りが決まったところだった。
でも、この件が彼の両親の耳に入り、今のようにストーカー被害なんてものが
一般的に知られてなかったので
「本人(私)に隙があったから」
「何かしら勘違いさせるようなことがあったはず」
と、私にも原因があったように言われてしまった。
そして、
「本当にAとはなんの関係もなかったのか」
と疑われ、彼もそんな親を説得しきれず、別れることなってしまったのだ。

私はいたたまれなくなって会社も退職した。

あれから15年以上経った今でもその頃の心の傷は完全には癒えていない。
っていうか、結婚願望自体がなくなって
お一人様人生で終えることを想定して鋭意努力中。

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