2024/06/08
5年ぐらい前、私がまだ20代の頃の話。
当時、私はアパートで独り暮らしをしていた。
ある時、会社から帰ってくるとポストに一通の封書が入っていた。
差出人の名は書いて無くて、中にはある有名な舞台のチケットと手紙が入っていた。
手紙はいわゆるラブレターで、私への思いが綴られており、
「劇場で会いましょう、僕が誰かはその時まで内緒、あなたが知ってる人間です、きっとビックリするでしょう」
みたいな事が書かれてあった。
その頃私には彼氏がいたし、相手について全く見当がつかなかった。
また、ちょうどその少し前に、アメリカだったか忘れたけど、懸賞に当選しました!と野球観戦チケットを送って、当日留守中に空き巣に入るという事件の話を聞いたことがあったので、気持ち悪くて行かなかった。
もし私の知ってる人なら、後日誰か分かった時点で謝ればいいし、まともな人なら警戒する気持ちも理解してくれるだろうと甘く考えてた。
しかし、その考えに反して観劇日の翌日から脅迫じみた手紙が入るようになってしまった。
「何故来なかった、馬鹿野郎、スカしやがって、ふざけんなよ」
と、最初の紳士的な文面とは正反対のものだった。
当時私は携帯電話を持っていなかったのですが、会社から帰宅すると、玄関ドアを閉めたタイミングで電話が鳴る。
そして受話器をあげると切れる。
ただ、手紙も電話も毎日じゃなくて不定期。
少ないときは週1ぐらいだけど多いときは週3~4回のときもあった。
そういう事が続いて3ヶ月ほど経って、さすがに気持ち悪いので引っ越しをした。
しかし、やっと治まったかと思ったのもつかの間、一ヶ月もすると又同じ事が始まった。
さすがに今度は無言電話は無かったけど、宛名のない直接投函されたらしい封書がポストに入れられるようになったのだ。
明らかにあとを付けられて家を探られたのだろう。
そう考えると分かり怖くなって、手紙を持って警察に相談に行った。
しかし警察では
「そういうのは無視が一番効果があるんです。相手にされないと分かると止めますよ」
と何の解決にもならないアドバイスをされた。
そのうえ
「ひとり暮らしの女性は寂しさのあまり何でもないことをこじつける傾向もありますから」
とまるで私の妄想かのように笑いながら言われた。
まだストーカーなんて言葉が一般的ではなかったし規制法もなかった時代だった。
しかし、警察は味方になってくれないのかと落ち込んだ。
もう一度引っ越そうかとも思ったけど、その頃彼と結婚話が出ていたので、彼とも相談して引っ越しするより一旦実家に戻ることにした。
私の実家は同じ県内だけど、県境に近い田舎で通勤が不便。
でも安心には変えられないと思った。
しかし、修羅場はその直後に突然起きた…