おはなしカフェ

「前から私夫さんには、(キチママと)キチ子のほうが相応しいと思ってたのよね」

time 2024/06/21

「前から私夫さんには、(キチママと)キチ子のほうが相応しいと思ってたのよね」

年長の夏頃、親しいママ友とふたりで園の近くの公園に寄って、娘たちを遊ばせていたら、
キチ子を連れてキチママがやってきた。

娘は体も小さいし大人しくて、キチ子に泣かされることが多い。
そのときも
「娘子ちゃんはあっちにいって!友子ちゃんはあたしとふたりだけで遊ぶんだから。あんた邪魔。帰れ」
と言われてべそをかいて戻ってきた。友子ちゃんは賢いので
「いじわるはいけないんだよ」と、娘を追ってこっちに。

ママ友が「場所を変えよう」とベンチから立ち上がったところで、キチママが追いついた。
「一緒に遊ばせてやって。あと十分でピアノの時間だから、おねがい。
お稽古が多くて、なかなかお友達と遊べないし」
すぐ居なくなるならまあいいか、とママ友とベンチに座り直した。
キチママは時計を見ながらキチ子を放牧。

忙しくて倒れそうと愚痴るので話を聞くと、ピアノだスイミングだお受験塾だリトミックだと平日は毎日、
土日もびっしり習い事をさせているという。
「ハードスケジュールでキチ子もストレス溜まってるから、
ちょっとくらい意地悪したって子供同士のことだし、
成長過程では当たり前のことなんだから、大目に見てくれないと」
とさらっと言われて、ママ友と目を合わせると
「お金もかかるし、才能のある子供をもつのも悩みだわ。
平凡な子供の親だったら気楽でいいんだけど」と言う。

うっとうしいので適当に話を合わせていると、
「ねえ、私さん、ご主人の帰りが夜遅くてイヤだって言ってたじゃない?
アタシはそういうの気にならないから、ご主人とうちの夫、交換してあげましょうか」といいだした。

131: 名無しの心子知らず 2012/05/25(金) 10:36:09 ID:HUF4Z6CV
は?と聞くと
「公務員だし帰りは早いわよ。図体ばっかりでかくて見るのもいやなのに、
夕食にはさっさと帰ってくるし。給料は安くて取り柄もないけど、
私さんはべつに娘子ちゃんに習い事させる訳じゃないし、
お金かからないからそんなんでも十分でしょ。
前から私夫さんには、(キチママと)キチ子のほうが相応しいと思ってたのよね。
キチ子だったら一緒に歩いても鼻が高いし、私夫さんだってあちこちで自慢できるよ!」

冗談にしてもひどいなあと思っていると、ママ友が

「私さんが言ってた帰りが遅くていやっていうのは、ご主人の体が心配って意味なのよ。
娘子ちゃんのことだって可愛がっていらして、ご家族仲もいいし。
それから、そういうことは子供のいる前で言うことではないのよ。
冗談にしても母親が父親を悪く言うのを聞いたらキチ子ちゃんが傷つくでしょ。
さあ、もう時間だから行かないと習い事に間に合わないわよ」と助け船を出してくれた。

キチママは「えーでも、冗談じゃないしー」とか
言いながらキチ子を連れて公園を出て行った。

変わった人だねー、と二人で話をして夕方まで一緒に遊ばせて、別れて家に帰った。
自宅電話に、キチママから「急な話で驚かせてごめんねー」と留守電が入っていた。
いやな気がしたが、気にしないことにした。

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