おはなしカフェ

中国の工場に出張した時。俺「ちょっと散歩するかな」王さん「ダメ。田舎だし何もない。」→王さんに嘘を言って、こっそり外出した結果…

time 2018/06/13

中国の工場に出張した時。俺「ちょっと散歩するかな」王さん「ダメ。田舎だし何もない。」→王さんに嘘を言って、こっそり外出した結果…

「ぐぅぇぇ…」

という声が聞こえて、俺は気が狂ったように振り向いた。

俺の部屋の窓枠に、外からしわくちゃの手、長い爪がしがみついてたんだ。そしてぼさぼさの白髪と、膜がかかったような目がだんだん見えてきた。

昼間は半分しか見えなかった顔が、ゆっくりと、全部現れてきた。土気色のしわくちゃ顔に、線を引いたような薄い唇だけが真っ赤だった。

俺が動けなくて凝視していると、婆さんが突然ヒラリというか、ふわっというか、急に窓枠の上に上がって来たんだ。

そこで俺は弾かれたように立ち上がって、なんか叫びながら、転げるようにして部屋から出た。

俺の叫び声を聞いて、ゲストハウスの台湾人たちが部屋から飛び出してきた。王さんもすっ飛んで来て、

「どうしました?どうしました?」

と聞いてくる。

俺は腰が抜けて廊下にへたり込み、部屋を指差して

「ば、ば、婆さん、窓、窓」

としか言えなかった。

王さんらが俺の部屋へ入っていったが、すぐに出て来て、

「何もないですよ。一体どうしたんですか?」

他の台湾人に水をもらって、人に囲まれた俺はちょっと落ち着き、昼間のボロ屋の話から始めた。

王さんの顔がこわばる。

王さんが中国語でみんなに話すと、みんな

「アイヤ…」

と首を振った。

「…だから、1人で工場の外へ出るなと言ったでしょう!」

王さんも、首を振り振り言った。

そうだ。肩の傷はどうなった?と思いめくってみると、赤いスジだけだった傷は膨れ上がり、熱を持ったようになっていた。ずきずきと痛みも感じ始めた。

王さん達はその傷を見て、もっと深刻な顔になっていき、なんやらワアワア話し始めた。何人かは携帯を出してきて、あちこちに電話し始めた。

婆さんも怖かったが、台湾人達の緊迫した様子を見て、俺はたいへんな事態なんだと、もっと怖くなった。

その晩は王さんの言葉にしたがって、王さんの部屋で王さんともう1人の台湾人と寝ることになった。

俺はもう怖いのと、肩が痛いのと、疲れたのでベッドでぐったりしていたが、王さんともう1人の台湾人は、なにやらヒソヒソと、ずっと話し込んでいた。

翌日朝早く、ゲストハウス前に迎えの車が来た。この工場に元々いるという幹部職員が乗っていて、王さんともう1人の台湾人と一緒に、俺も車に乗って出かけることになった。

「日曜なのに王さん、みなさんにすまない。でも、昨日のあれは何なの?これからどこへ行くの?」

と王さんに聞いた。

王さんは一瞬怖い顔をしたが、すぐにっこり笑って

「だいじょうぶです。これから解決に行くのです。」

としか言ってくれなかった。

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引用:にゃんこ速報
画像出典:写真AC

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