おはなしカフェ

中国の工場に出張した時。俺「ちょっと散歩するかな」王さん「ダメ。田舎だし何もない。」→王さんに嘘を言って、こっそり外出した結果…

time 2018/06/13

中国の工場に出張した時。俺「ちょっと散歩するかな」王さん「ダメ。田舎だし何もない。」→王さんに嘘を言って、こっそり外出した結果…

車で小1時間ほど走っただろうか。よく似た田舎の風景、よく似た農家らしき1軒の家で車は止まった。

門内の中庭に中年の女性が待っており、土間の部屋には盲目らしい婆さまが座っていた。

部屋はうす暗く、大きなロウソクが焚かれ、線香か何かの匂いで咳き込みそうになった。

拝み屋さんか?と思いながら、うながされて婆さまの前へ行き座った。

俺が近づくと、婆さまは思いっきり顔をしかめて何やら言った。工場幹部や王さん、中年女性が何か言う。

しばらく話が続いたが、俺は言葉もわからないし、王さんも何も聞いてこないのでずっと黙っていた。

婆さまは紙と筆を用意させ、ブツブツつぶやきながら、紙にしゃらしゃらと絵文字のようなものを書き、拝むような仕草を何度もした。

この時は誰も何も話さず、俺は異界に迷い込んだようでますます怖くなった。

次に婆さまは皿に紙を置いて、ロウソクで火をつけて燃やし、またブツブツ言った。

王さんが俺に、シャツをめくって肩を見せるように小声で指示した。婆さまは俺の傷が見えるのか?ブツブツつぶやきながら、灰を傷に塗りつけた。

俺は痛くて思わず

「ウッ!」

と言ってしまったのだが、王さんに手でけんせいされた。

何度か灰を塗りつけた後、中年女性がおわんに水のようなものを入れて持ってきた。婆さまは、灰をつまんでおわんに入れてブツブツ言うと、俺の前に差し出した。

俺が王さんを見ると、王さんは黙ってうなずいたので、俺は恐る恐る飲んでみた。灰がちょっと苦かったが、普通の水だったように思う。

合計3枚の紙に何やら書かれ、同じ行動を繰り返した。

婆さんが大きな声で叫んだ(かなりビックリした)あと、王さんが

「終わりました」

と、口を開いた。中年女性が、絵文字を書いた紙を俺にくれた。

王さんが

「いつもそれを持っていてください」

と言った。

帰りの車では、誰も何も言わなかった。ただ、それから3日ほど、王さんの部屋で寝るように言われた。

その後も王さんは何も言ってくれないし、俺も聞く気になれなかった。俺は心底怖かった。

異国の地で異形の婆さんを見て、拝み屋へ連れて行ってもらい、護符のようなものまで持たされたんだ。

ビビリと思われるだろうが、しばらく1人になるのが怖かった。窓の方も見られなかった。

翌日からの仕事中も上着の胸ポケットに護符を入れ、風呂に入る時は護符を洗面台の上に、寝る時は枕もとのテーブルに広げておいた。傷の腫れはすぐひいて、3日目くらいにはスジも薄れてきた。

次の土曜日、同じメンバーであの婆さまの所へ連れて行かれた。

婆さまは今回顔もしかめず、1回きり紙にしゃらしゃらと何かを書いて灰にし、水に溶かして俺に飲ませ、両手でパンパンと俺の肩を叩くようにして、大声でなんか言った。

王さんが

「もうだいじょうぶです。もう怖くありません。よかったですね」

と、笑って言った。

俺が持たされていた護符も、皿の上で焼かれた。

帰って来て、王さんの部屋で2人になった時、俺はあの婆さんはなんだったのか聞く勇気が出てきた…

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引用:にゃんこ速報
画像出典:写真AC

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