おはなしカフェ

ある日、兄が不機嫌そうな顔で帰ってきて、ご飯も食べずに部屋に閉じこもった。

time 2022/11/14

ある日、兄が不機嫌そうな顔で帰ってきて、ご飯も食べずに部屋に閉じこもった。

ある日、兄が不機嫌そうな顔で帰ってきて、ご飯も食べずに部屋に閉じこもった。
心配して晩ご飯をもって兄の部屋にいくと兄から「相談がある」といわれた。

兄の話では、昨日突然A子さんの知り合いだという男性から携帯に電話がはいった。
呼び出されたところにいくと、30代後半くらいの男性がいて
「A子は私の妻で子どもも居る。どうか別れてほしい」と真剣な顔で言われた。

男は「子供のためにもどうか今すぐ別れてください」と泣きながら訴えたらしい。
言われてみれば、A子は親の介護を理由に毎週会ってもくれなかった。
家の近くまで送ることはあっても「ふるい市営住宅で見せるのが恥ずかしい」とか
「母親が半分寝たきりで部屋も散らかってるから」と家は絶対に見せなかった。

A子には子供も夫もいて、それを隠して付き合っていたんだとしたら辻褄も合う。
だからA子とは別れようと思う…ということらしい。

私は「一応A子さんと話し合ったら?」と忠告したんだけど、兄は頑なに
「嘘つきのA子の顔はもう見たくない。」
「さっき別れのメールも送った」と言った。

見せてもらうと
「A子にはひどい裏切をうけた。俺はすごく傷ついている。二度と会いたく無いしメールもするな」
というメールだった。
A子さんからは「事情がわからないから一度ちゃんと話し合いたい」という返事がすぐ来たものの、
それに対する返事はもう送る気もないらしい。

29: 恋人は名無しさん 2007/10/09(火) 15:39:54 ID:MsVLiL+d0
「じゃあ、別に良いじゃん。別れたんでしょ?」というと
「いや、でもA子から借りてる本が山ほどあるんだけど
顔も見たく無いから返せない。お前が返して来い」と言い出した。

「てめぇの後始末くらい自分でしろ」と思ったものの、兄にはちょっとした借りがあったので
私がA子さん宅に本を返しにいくことでチャラにしてもらった。

翌日、A子さんから借りたという本を持ってA子さん宅へ向かった。
旦那が出てきたら「以前お世話になったもので、刈りっぱなしにしてた本を返しにきました」と
言い訳すれば良いか、とか考えていた。
A子さんなら何も言わずに渡せば判ってくれるだろう、とか。

A子さんの家は築数十年は経ってるであろうボロい家で、
チャイムを鳴らすと杖をついてパジャマをきたおばあさんがでてきた。
「どなた?」と聞かれたので「A子さんにお世話になってて…本を返しに…」と
ちょっと戸惑いながら言うと
「A子は今買い物にいっているので、しばらくあがってまっててください」と
かなり聞き取りにくい言葉で言った。

おばあさんが先に奥へ引っ込んでしまったのでそのまま帰るわけにもいかず、部屋へ入ると
中はさらにボロで、それでもキレイに片付けられていた。

少し話をすると、そのお婆さんは確かにA子さんのお母さんで、
半身麻痺がありほとんど寝たきりだけど調子が良いと杖をついて散歩くらいには行ける、
という話だった。

てか、どう見てもA子さんの旦那も子供もいそうにない。
それとなく「A子さんは結婚しないんですか?」というと
「私のせいでそういう話も全部壊れてしまって…」と涙ぐんでしまった。

(Visited 11,788 times, 1 visits today)

down

コメントする




シェアする

  • 人気記事

  • 最近の投稿

  •