2024/06/08
341: 恋人は名無しさん 2010/02/14(日) 00:07:57 ID:rIrWwoS+0
ある日、いつものように夕方バイトに向かっていると、店の前に着いたところで
夕方まで勤務しているパートのNさんから電話があった。
「S(私)ちゃんっ?今どこっ?」
「え、店の前ですけど」
「来ちゃ駄目、絶対に店に入らないで!」
あまりに尋常じゃない声に、思わず店の前で立ち止まりNさんに問いかけた。
「何があったんですかっ?」
「あのね…きゃー!」
という叫び声と共に電話が切れる。
強盗かと思い、逃げろと言われたにも関わらず店に飛び込んでしまうと、
レジのところに立っていたのは強盗には似つかわしくない真っ赤なコートを着た女の人だった。
その向こうでNさんがうずくまっている。
「Nさん!」
思わず叫んでNさんの元へ駆け寄ろうとしたところで、その女の人がゆっくりこっちを振り向いた。
その表情はあまりにも生気の篭っていない顔で、ニタニタと笑っている。
目が合った瞬間にその表情から想像も出来ないほど気持ち悪い優しい声で尋ねられた。
「…Sさん?」
「はい、そうですけど…」
返事をした瞬間にその女の人の表情が一変した。
レジにトレーが並べられているのだが、突然それを掴むと、
目を見開いて私のほうへ向かって何枚も投げ出した。
殺傷能力は無いが、当たれば痛い。
回転しながら飛んでくるいくつものトレーから逃げつつ、
私はレジの中に入ってNさんの元に駆け寄った。
342: 恋人は名無しさん 2010/02/14(日) 00:09:44 ID:rIrWwoS+0
丁度休憩中だったバイトの男の子が
物音に気づいて慌ててバックヤードから出てきてくれて、
その女を取り押さえ、「とりあえず警察!」といわれた為に、
私はNさんを抱えるようにして二人でバックヤードに逃げ込んだ。
とりあえず警察に連絡をして直ぐ来てくれるとのことでお願いをして、
その後店長にも連絡をした。
帰宅途中で、店の近くの本屋に居たという店長も直ぐ戻ってきてくれるとのことで
バックヤードに泣いているNさんを残し、とにかくお客さんが店に入ってこないようにしようと
私は一旦レジのところへ戻った。
男の子に押さえつけられて諦めたのか、
腕をがっしりと掴まれた状態で女性は店の椅子に座っていたが、
うっかり私と目が合ったところでキッと睨まれて、店中に響く声で叫ばれた。
「泥棒ネコ!」
まさか、現実世界で昼ドラみたいな罵声を聞くことになるとは思わなかった。
でもやっぱり全く身に覚えが無いため、とりあえず自動ドアがあかないように閉めに走る。
偶然店内にお客さんは一人もいなかった。お客さんの迷惑にはならなかった。
343: 恋人は名無しさん 2010/02/14(日) 00:11:12 ID:rIrWwoS+0
数分の後、到着した店長が裏口のドアから入ってきた。
バックヤードを抜けて店内に入り、その女性を見た第一声が
「K…」という女性の名前。