2024/06/08

菜美からの連絡はその日の夜にあった。
電話ではなくメールだった。
メールには
玄関前で音がしたので、菜美がドアの覗き穴から外を覗いたら
ちょうど吉村もその穴から部屋の中の様子をうかがってる最中で
うっかり目が合ってしまったとのことだった。
すぐ近くにいると思うと怖くて声が出せないから、
電話ではなくメールで連絡したらしい。
俺は、すぐに警察に連絡するように返信したら
警察に電話なんかしたら、通報する声が吉村に聞かれてしまって
それで逆上されて、とんでもないことになるかもしれないって返信が返って来た。
俺は、警察への通報は俺がするということ、
すぐ行くから部屋から出るなということをメールで伝えた。
俺は、昔、野球やってたときに使ってた金属バットをバットケースに入れ
そのまま菜美の家に向かった。
警察は、俺が着くより前に見回りに来てくれたらしいけど
周囲をざっと見て、菜美の部屋のベルを鳴らして
菜美の顔を見て無事を確認したらすぐ帰ってしまったらしい。
その日、俺は菜美の部屋に入れてもらった。
翌日、菜美は朝早くに出発の予定だったので
俺が寝ないで見張ってるから、とりあえず菜美は寝るように言った。
その日が、菜美の部屋に入った初めての日だった。
普通なら、俺たちの関係に少しぐらい進展があってもいいんだろうけど
結局、何事もなく終わった。
怯える菜美がなんとか寝付いたのは深夜2時過ぎ。