2024/06/08

子供連れのお母さんなどは、刃物を持って大声出してる吉村に気付いて
大慌てて逃げて行く。
吉村が菜美に近づこうとしたときは少しあせったが
菜美が「まだそこで待ってて。まだ二人が近づくのは早いの」
と言ったら、吉村は近づくのを止めた。
すごいと思った。
この短時間で、菜美は支離滅裂な吉原の話に上手く合わせていた。
しばらくして、8人ぐらいの警官が来た。
パトカーから降りると、警官たちは手際よく吉村を包囲した。
「刃物を捨てなさい」
警官の一人が穏やかで、しかし厳しい声で言った。
吉村は、警官は認識できるようで、
オロオロ周り警官を見渡しながら八方の警官に順に刃物を向けた。
「吉村君、まずは包丁地面に置こうか。
吉村君、何か悪いことした?
もし、しちゃってたらもうダメだけど、してないなら捕まらないよ」
菜美は元気よく明るい声でそう言った。
吉村の注意がまた菜美だけに向かう。
「吉村君、死にたくないでしょ。
早く置かないと、鉄砲で撃たれちゃうよ」
吉村は笑顔で包丁を捨てた。
不気味な、人間とは思えない笑顔だった。