2024/06/08
893風の男たちが来てから、初めて吉原は借金の話を始めた。
実は、吉原は街金から借金してており
返済資金に困っているので返済に力を貸して欲しいと、
泣きながらお願いされたとのことだった。
力を貸すってのは、つまり風ゾクで働くってことだ。
理不尽な話なので最初は
「何で私が…」とか「関係ありませんから」などと反論して
席を立って帰ろうとしたらしい。
だが、席を立とうとすると、吉村に腕を掴まれて無理やり引き戻され
また、893風の男たちからも
「話のケリもつけずに帰ろうってのか?
なめてんのか?てめえは?」
と凄まれたりしたので、怖くて帰ることが出来なくなってしまったらしい。
あまりに意外なストーリーに俺は呆然と聞いてた。
だが、そのとき俺は、菜美の話をあまり信じてなかった。
見ず知らずの女に「自分の借金返済のために風ゾクで働いてくれ」と頼むやつなんて、
現実にいるわけないだろ、と思ってた。
俺「山田さん、もしかして○○駅近くの○○と
××駅近くの△△でバイトしてるんじゃないの?」
菜美「え?……何でご存知なんですか?」
俺「吉村さんから聞いてるからだけど。
山田さんは見ず知らずだって言ってるけど、
どうして吉村さんは、そのこと知ってるのかな?
それから、もしかして自宅近くにファミマあるんじゃない?
吉村さん、よくそこで山田さんが何買ったとか話してたよ。
本当に、見ず知らずの人なの?
吉村さん、山田さんとの結婚考えてるって言ってたよ。
トラブルに巻き込まれたくない気持ちはよく分かるけど
でも、見ず知らずの他人なんて言い方したら、吉村さん可哀想だよ」
菜美はきっと、トラブルから逃げたくて、吉村と赤の他人のふりしてるんだろう。
そう考えた俺は、菜美に不快感を感じて、つい意地悪なことを言ってしまった。
意地悪な問いかけによって
菜美は開き直って、少しは本当のことでも話すのかと思った。
だが菜美は、この話を聞いてガタガタ震え出し、泣き出してしまった…