2024/06/08
翌週からその新人は、早出・残業・雑用と、文句も言わずこなすようになった。
約一月後の朝礼で、彼はこう切り出した。
「ようやく一ヶ月かけて26冊置いていただけました。申し訳ありませんでした。
ところでお聞きしたいのですが、この本の売り上げが、前期計算で月あたり平均
10~20冊程度だったわけですが、先月お聞きした優秀な諸先輩方の数字を
全て足してもその数字には届いていないんですが、これはどういう事でしょうか?」
皆押し黙ってしまった。彼は続けた。
「どうやらある種の通過儀礼だったようですが、それはそれでかまいませんので、
まあ週末にでも苗枝あたり(高級居酒屋)でゴチしてください。
ところでモノは相談なんですが、現在売上上位の「○○人入試の小論文」なんです
が、あれ僕に任せていただけないでしょうか。」
それは課長が身を粉にして小売各社と交渉して売上を出してきた、いわばドル箱
だったんだが、その仕事は現在成績トップの主任が引き続き担当して
いる仕事だった。
主任「お前にはまだ早いよ。それに各社との顔合わせだってまだだろ。」
新人「そうですが、とりいそぎ紀○○屋に居る知り合いに拡販の計画申し出は
行ってあります」
主任「勝手にそんな事するなよ。こっちだって計画があるんだぞ!」
新人「しかし今現在、売上は下降曲線を描いてますし、良い本なので是非とも
任せて欲しいんです」
そこに課長が割って入った。
「まあ、お願いしてみようじゃないか」