2024/06/08
嫁は俺と同じ会社の同じ階の1つ隣の課に配属された。
しかし配属後1年は挨拶程度で何の関係も持たなかった。
嫁は違うと言うが、俺は嫁を魅力的と思えなかったので意識する事はなかった。
実家が高度成長期に土地成金になったクチで、嫁は根っからの上流階級に少々コンプレックスを持っている。
加えて容姿がデブスだったのが災いしお嬢様女子校時代は底辺グループに属して居たらしい。
別に卑下する必要ないと思うがコネ入社だった事も気にしていた。
自分は社会に受け入れられないと悩みちょっと残念な大学・OL時代を過ごしていたと思う。
ある日、夜8時半ごろ、誰も居ないはずのオフィスに帰るとコピー機の前で嫁が奮戦していた。
よく聞くと3人でやるはずだった仕事だが、先輩OLは年休を取り、後輩の新入OLはデートだからと帰ってしまったという。
隣の課の事とは言えなんとなく嫁が浮いていたのを知っていたので
「手伝おうか?」
と声をかけた。
嫁は驚いていたがこのままでは到底帰れそうにない状況なので俺の助けを受け入れた。
2人で黙々と作業を進めると、直ぐに嫁はドン臭い割に責任感が強く適当に流せない性質だと分った。
仕方なく付き合っていた俺は褒め言葉でそれを揶揄したつもりだったが嫁には通じなかったようだ。
11時半頃にようやく終わったのでお礼がしたいという嫁を
「もう遅いから」
とタクシーに乗せ帰した。
翌日嫁がまたお礼がしたいというので、日を改め初めて2人だけで食事を取る事になった。
不安げに好きな物を奢らせて下さいというので、冗談のつもりで
「フレンチのフルコース」
と言うと、嫁はニコニコしながら
「任せて下さい」
という。
唖然としながら嫁に連れられて入った店は、小さかったが如何にも高そうでビビってしまった。
俺に嫌いな料理がない事を確認した後に、ワザワザ俺達のテーブルまできていたオーナーシェフと宇宙語(嫁は仏文科である)で会話した。
俺に聞かれると不味い事を言うためにだったとは思うのだが、聞けばメニューの相談をしただけという。
シェフはからかい気味で、嫁がはにかんでいたので何か別の内容だったと今でも疑っている。
嫁が無理に誘ってゴメンなさい的な事を言われた後
「別に」
的な返事をしたと思う。
食事もワインもきっと良かったのだろう、が2人とも緊張して全く盛り上がらなかった。
デザート&コーヒーが終わって勘定の時間だと思い
「半分出すよ」
と言うと、何故か哀しげな表情になり
「もう払ってます」
と答える。
何でもメインが終わった後、俺がトイレに行っている間に済ませていたという。
たかだが23才の入社2年小娘が入社6年目の先輩男性社員の俺に対してである。
ちょっとカチンとした俺は店を出るなり嫁に
「半分払う」
と言うが、嫁はお礼ですからと拒否していたが、俺の勢いに負けて
「なら次、奢って下さい」
参考のために金額を聞いたが、嫁は
「忘れました」
と教えてくれなかった。
ずっと後になってしつこく値段を聞いたら当時の俺の手取りの30%くらいだった。
どうも奢られっぱなしと言うのは気分が悪かったので、その2週間後自分から誘った。
嫁に金を使うのはなんとなくもったいなく感じたのでチェーンの居酒屋にした。
でも嫁はニコニコして嬉しそうだった。オニオンスライスというメニューの存在に驚いていた。
そこで前の行ったレストランについて
「お馴染みなのか?」
と聞いた。
「家族とはあの店に2月に1回くらい行く」
と言った嫁に
「彼氏とのデートで使ったことはないか?」
と問えば、、
「男の人とちゃんと付き合った事がない」
と恥ずかしそうにいう。
その話から嫁の家の財力に興味を持った俺は嫁について色々聞きだした。
積極的な俺の態度から、単純に嫁本人へ興味があるのかしら?と思ったそうだ。
居酒屋は込んでいたので小さい嫁の声が聞こえないために早々に切り上げて喫茶店に入った。
話すテンポの悪さに苛立ちながらもあっちこっちに飛ぶ嫁の話を聞いた。
別れ際に嫁が力のこもった表情で
「是非また誘って絶対下さい」
というので、
「また奢ってくれるなら」
と言うと凄く嬉しそうに嫁が笑ったのを覚えている。
その後かわりばんこで奢られながら何回かデートした。
その結果、嫁がそこそこの金持ち(会社では隠してした)でかつ俺に惚れているだろう事が分った。
そこで俺は嫁の実家の財産目当てで結婚するという悪魔の計画を起てた…