2024/06/08
ああ、あきらめたんじゃなかったんだ。
私は軽い絶望を覚え、しかし体は動かすことが出来ずにただドアを凝視していると、開かれた隙間から鈍く光る大きなペンチのようなものが差し込まれてきました。
ダメだ、これでは殺されてしまう。そうだ、赤ちゃんを守らねば、最悪自分はどうなろうと娘だけは何とか。私は内にたまったパニックと普段の抑圧を解放するように大声で叫びました。
自分はどうなってもいい、近所づきあいなんてどうでもいい、ただ娘のために叫ばなくては。多分声になってなかったと思います。同時に牛乳の入ったグラスをドアに向かって力いっぱい投げつけました。
グラスは偶然にもペンチに辺り砕け散ってミルクが辺りに飛び散ります。
するとペンチがドアの向こうの持ち主を失ったかのように玄関へ半身を除かせたままゆっくりと落下しました。
そしてドアの向こうで誰かがあわてて走り去る音がし、人の気配がようやくなくなりました…。
その後私は…