おはなしカフェ

弟が癌で亡くなった時、近所の聾唖のおじいさんがお通夜に参加してくれた…

time 2020/03/12

弟が癌で亡くなった時、近所の聾唖のおじいさんがお通夜に参加してくれた…

おじいさんは子供達を可愛がっていたけど、特に弟を可愛がっているようで、たぶん、孫みたいに思ってくれてたんだろう。
弟も、反抗期も、親や私には悪態ついても、祖父母やおじいさんには優しい子だった。

就職した時、初給料で祖父母含めて家族を寿司屋に連れてってくれた時も、お店に
「寿司折お願いします。お好みで」
と、おじいさんの好物を選んで折にしてもらって、持っていってた。
風邪をひいて寝込んでいるらしいと聞いた時には、仕事を休んで看病したり、病院に送り迎えしてた。
仕事帰りに、おじいさんの薬をもらってきて、ついでだからと食料や雑貨を買ってきたり、家電が壊れたら何とか直してあげたりと、正直、
どうして他人のおじいさんにそこまでするんだろう、ってほどだった。
祖父母の通院も手伝ってたけど、そのおじいさんには特に優しかったから。

そんな弟が、あっさり死んだ。

長患いでもなく、入院したと思ったら、あっという間に危篤になって…で。

通夜の夜、おじいさんは泣きはらした目で来てくれた。
うちの地域では、通夜は夜通しやるけど、ずっといていいのは親族だけというルールがあるんだけど、おじいさんは、私に、
「あさまで、弟くんのそばにいてもいいですか」
と書いた紙を見せ、土下座せんばかりに頼んできた。
私が頷いて、ありがとうと頭を下げて、
「明日の告別式にも出てあげてほしい」
と書くと、おじいさんは
「ぼくが よめるかんじ、かけるかんじ、弟くんの なまえだけです。いちねんせいのとき、おしえてくれました」と…。

そこで遠縁のおばさんが、
「まー○○さん!帰らなきゃいかんよ、お通夜は親戚でやるもんや!」
としゃしゃり出てきた。
おじいさんは泣きながらお願いしますと言うように頭を下げ続けてた。
おじいさんに聞こえないのをいいことに、ずっと汚い言葉で帰れと責めるおばさん。
でも、弟の
「○○さんは、耳は聞こえないけど、相手がどんなこと言ってるかは大体わかるんだよ」
という言葉を思い出して、私も泣きながら
「○○さんには参加していただきます。両親にそう言います、弟だって喜んでくれるはずですから!」
と言った。
おばさんは
「あのね、お通夜っていうのはね」
と言い出したから、

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