2024/06/08
それから結婚すると言いだしたのは、別居から半年後。
つまり新郎と新婦たちが卒業する時期。
婚姻届が受理された日にちとも一致する。
書類上の新婦の両親との電話は終わり、10時30分ぐらいになっていた。
学校の先生たちは、相手が精神病患者なら、裁判では勝利できるだろう、みたいに楽観していた。
先生たちの心配は、新婦の誤解を解く事に集中していた。
明日、昼に、ゼミの教授から、新婦に電話をするということで、合意した。それで誤解を解くのだという。
まもなく11時になるから、解散しよう、何かあったらすぐにケータイを鳴らしてくれ、ということで、その場にいた全員とケータイの番号を交換している時だった。
新郎のケータイが鳴った。
知らない番号からだった。
「誰?」
「知らない番号です」
「出るな!」
教授の1人が怒鳴った。
新郎は出なかった。
「ナンバーは表示してあるか?」
「はい。080-xxxx-xxxx」
「それは書類上の新婦の番号だ」
准教授が言った。
「どうします?かけなおしますか?」
「変に返事をしても事態が悪化する。よく考えよう」
「すぐにもう1回来るかもしれない。そうしたら、出なさい」
教授の言う通り、すぐに電話が鳴った。
「ハンズフリーにして、全員が聞こえるようにしなさい。他のみんなは何があっても、誰もしゃべっちゃいけません。君は今、1人きりということにしなさい」
「はい」と返事をして、新郎が電話に出た。