147: 2016/11/22(火) 14:52:56.34 ID:qljtUMUh
嬉しくて堪らなかった。その日は親父に勉強しろと言われていたけれどそんなの知ったこっちゃ無かった。
いつもの駅で待ち合わせて俺はジジイがつけてないかどうかを調べて出会った。やっぱり駅の階段は危なっかしかった。
通行人は彼女の杖を避けない。気にしない。後に聞いた話だが何回も転ばされたという。
五十鈴「おまたせ!」
俺「う、うす…」
五十鈴「じゃあ私の目になって!」
そういって腕を捕まれた。正直泣きそうだった。彼女の身の上に勝手に同情してた。
148: 2016/11/22(火) 14:59:56.95 ID:qljtUMUh
それからその駅に戻って2駅ぐらい進んで降りた。正直自転車でも行けた。
彼女とひたすらに点字ブロックの上を歩いて不意に彼女が止まった。
五十鈴「今右にお店あるよね?」
俺「え、ええ。ありますよ」
五十鈴「そこ!」
そこは小さな古楽器店だった。そこが彼女の家だった。(正確には住む家はもっと駅の手前にあった)
カラン
いらっしゃいと出てきたのは女性だった。彼女の母親兼店長だった。
149: 2016/11/22(火) 15:06:39.27 ID:qljtUMUh
彼女母「あら?その方は?」
説明しようとすると遮られた。
五十鈴「私の目!」
俺は恥ずかしくってちょっとと止めにかかってた。母親はあらあらとにんまりしてたのを覚えている。
店内はやっぱり広くは無かった。楽器だけでなくCDも置いていた。しかも凄い数が仕舞われていた。
俺「すっげー…」
彼女母はふふんと鼻をならした。彼女母は若いときはかなりの美人だったんだろうなあという顔。この母あってこの娘。という感じだった。
150: 2016/11/22(火) 15:11:57.37 ID:qljtUMUh
店にはもう一人いた。彼女の妹だった。彼女の妹はなんと俺と同い年。縁を感じざるを得なかった。
それから夏休みに入った。夏休みになると流石に勉強しなければいけなかったからジジイと彼女に会う時間は減った。
1週間に2日だけ。その時を全力で楽しんだ。
夏休みのある時。
ジジイ「お前の歌な。なんか違和感あるんだよ」
歌は全て耳コピ。英語の意味なんて知らなかった。
五十鈴「私もかんじてました」
151: 2016/11/22(火) 15:13:04.39 ID:9qi6Ic4s
五十鈴なんて読むの?
152: 2016/11/22(火) 15:14:12.94 ID:deomKHJx
いすずじゃね
156: 2016/11/22(火) 15:16:25.40 ID:qljtUMUh
ジジイと彼女は考える…ふりをしてた。
ジジイがわざとらしく手を叩いて言った。
ジジイ「英語だ。こいつは英語喋ってねえんだ」
彼女も大きくうなずいた。正直文法英語は苦手だった。文系な俺は数学は論外だったが英語も少し苦手だった。
俺「あー確かにそうかも。英語苦手じゃけえ」
159: 2016/11/22(火) 15:21:16.30 ID:qljtUMUh
ジジイ「それじゃあ意味ねえじゃねえかwww」
ジジイはガハハと笑ってまた肩を叩いた。彼女の前でそんな1面見せたくなかったから恥ずかしかった。というより聞かせたくなかっただな。
ジジイ「それじゃあギターはだいぶ出来るようになったけえ英語を教えるか」
俺「は!?なんでここが学校になるんだよ!」
ジジイは手を出して首をゆっくりふった。
ジジイ「俺は学校教育みたいな情けねえ英語は教えねえ。発音と慣用句。これだけで英語は喋れる」
160: 2016/11/22(火) 15:26:34.74 ID:qljtUMUh
ジジイはそう豪語した。彼女はギターをポロンと弾いて
「めくらな私でも日常会話は出来るよ!頑張ろ?」と言ってくれた。この時始めて彼女が英語を喋れることに気付いた。
益々惚れたがジジイも英語を喋れることに驚いた。確かに発音は良かったけどまさか喋れるなんて…
かくして中学生の俺。ホームレスのジジイ。盲目の五十鈴。こんな変な3ピースはギターに打ち込んだのだ。
178: 2016/11/22(火) 20:01:33.11 ID:qljtUMUh
そこからは変な日常が始まった。ギターのトレーニングの前に発音の練習からだった。歌詞を見させられジジイと付きっきりで発声。恥ずかしい上に意味不明だった。
でも文法があーだとか単数がーとか全く無かった。ジジイ…発音上手い…何もかもジジイに負けたと思った。
夏休みの間ほとんどそうだった。そして夏休みが明けたとき、俺はこのトレーニングによって新な効果を実感した。
二学期が始まってすぐテストがあった。それなりに勉強してたから大丈夫だろうと思ったけど少し不安だった。
179: 2016/11/22(火) 20:05:42.29 ID:qljtUMUh
でもその時の英語のテストである変化がおきた。俺はリスニングが得意じゃなかった。
英語が分かる!聞き取れる!
自分でも恐ろしく解けた。結局蓋を開ければ学年3位までになっていた。
幸せだった。変な意味でのリア充。それも嬉しかった。人と違うことをしている自分も好きになっていった。
この結果に親父はもちろん姉貴やジジイ、彼女も喜んでくれた。彼女はCDをくれた。クリームという可愛らしいバンドのCDだった。
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