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ホームレスにギター教えてもらった話

time 2021/12/16

ホームレスにギター教えてもらった話

273: イッチー・ブラックモア 2016/11/24(木) 22:21:19.60 ID:DX2dcY/Q
ジジイ「息子は12で逝った。西暦だと…1982年だな」
ジジイ「あの時はよおく覚えてるわ。マイケルジャクソンがスリラーを出したんじゃ」
いきなりのことに何のことか分からなかった。マイケルのスリラーは俺でも知っていたが…
ジジイ「連日ゾンビの映画が流れたな。俺はな壊れたかもしれんかった」
ジジイ「…ゾンビでいい。息子を返してくれ。俺もそしてゾンビになるから」
ここはよく覚えている。余りにも悲しく切なかった。俺はもう熱いものをこらえられなかった。
274: イッチー・ブラックモア 2016/11/24(木) 22:25:05.25 ID:DX2dcY/Q
ジジイは俺の涙に気付いていたのか気付かなかったか。まあ気付いていただろうな。それでも話を続けた。
ジジイ「酷かったのはよしのだった。あいつは息子の名前をただ呼ぶのみ。見てられなかったわ」
ジジイ「…それでも俺は仕事をした。息子を忘れたかったんだろう」
ジジイ「それからだんだんよしのも立ち直った。戦争後の日本を支えた二人だからな。やわじゃあない」
275: イッチー・ブラックモア 2016/11/24(木) 22:30:34.21 ID:DX2dcY/Q
ジジイ「時代は俺らを置き去りに進んだ。その間も多くの生徒から慕われた。俺は幸せじゃった」
泣き続ける俺。なんてジジイに声をかけよう。そんなこと思えなかった。ただジジイに同情した。
ジジイ「よしのが還暦になった年よしのは病気になった。もう助からん。そう言われた」
俺「…は?」
ジジイ「よしのは余命半年と言われた。今から思えばあの医者はヤブじゃな」
ジジイは笑った。
277: イッチー・ブラックモア 2016/11/24(木) 22:35:52.85 ID:DX2dcY/Q
ジジイ「よしのに俺はよくギターを聞かせた。ブルースじゃあねえ。イーグルスとかドゥービーとかだ」
イーグルスもドゥービー(ブラザース)もほとんど知らなかった。
でも今なら…なるたけ明るい、気さくな音楽を届けようとしていたのが伝わる。
ジジイ「あいつはスタンド・バイ・ミーをよく歌えと言った。あげな簡単なやついくらでも聞かすわw」
笑ってはいるが、もはやジジイも、限界だった。
278: 2016/11/24(木) 22:37:14.03 ID:5k1cjVWL
凄く面白い!
279: イッチー・ブラックモア 2016/11/24(木) 22:40:40.72 ID:DX2dcY/Q
ジジイ「よしのは…よしのは余命半年ながら3年も生きた。俺が還暦の誕生日、あいつは逝った」
ジジイは泣いていた。俺も泣いていた。浅い湯船に湯を増やすかの如く涙は流れた。止まる気配もない。止める気も…無かった。
ジジイ「…すまんな。こんな…」
俺「いいから…続けろ」
ジジイ「ふん!」
手で顔を拭った。ジジイはやっぱり若く見えた。

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