おはなしカフェ

ホームレスにギター教えてもらった話

time 2021/12/16

ホームレスにギター教えてもらった話

329: イッチー・ブラックモア 2016/11/26(土) 22:20:42.87 ID:FVaEeH7f
ジジイは笑って俺を見た。
ジジイ「姉ちゃん、それは俺の世代じゃねえなあ。俺、弾けるか?」
俺「…うん、練習したから」
姉貴「え?あんたが?」
姉貴をギャフンと言わせたくて実は練習していたのだ。姉貴がこの曲が好きなのは知っていたから。
ジャラーン
初めてジジイと五十鈴以外にギターを聞かせた。リビング、台所には親父。二人に対してのライブだった。
330: イッチー・ブラックモア 2016/11/26(土) 22:25:49.57 ID:FVaEeH7f
姉貴は出来るじゃん!と褒めてくれたし親父は頑張ったなと声をかけてくれた。それだけで俺は何万人からの拍手をうけたみたいな気分だった。
次の日からジジイはまた出ていった。親父は少しの間でもうちで住まないかと聞いたらしいがジジイが断ったという。
それからは普通だった。またジジイにギターを習いにいく。今度は親父に隠す必要は無くなった。時々姉貴もついてきた。
そして俺はバンドを組んだ。弓道部の友達二人とだ。主にドラムの奴のせいでジェフ・ベックをよくした。曲は好きだったがギターは凄く難しかった。
332: イッチー・ブラックモア 2016/11/26(土) 22:29:47.04 ID:FVaEeH7f
それから五十鈴に向けての曲作りもしていた。姉貴も意見をくれた。最初はインストゥルメンタルにしようとしていたがやっぱり言葉が欲しいという姉貴の意見で歌詞をつけることにした。
そして1ヶ月ほどたったある時五十鈴から話を持ち掛けられた。
五十鈴「私ね、ジジイさんに凄く感謝してるの。だから曲をプレゼントしたいなって思ってるの」
思わず吹き出しそうになる。結局、考えることは一緒だったのだ。
俺はバンドでジェフ・ベックを、ジジイと五十鈴に曲を、五十鈴とジジイに曲をという忙しい生活を送ることになった。
345: イッチー・ブラックモア 2016/11/28(月) 21:21:08.97 ID:fuLAD+3O
それから高校の部活もこなしつつ夏休みになった。
夏休みはよく五十鈴と遊んだ。端から見ればデートだったのだろうが俺はデートにしたかったのだ。五十鈴に内緒で曲を作った。
そしてとうとう出来上がった。つたない、2分半ほどしかない曲だった。内心喜びと不安が同居していた。分かるかな?この気持ち。
曲名は今でも覚えている。というより今も自分のレパートリーだ。
『Hold My Hand』だ。
346: イッチー・ブラックモア 2016/11/28(月) 21:24:26.12 ID:fuLAD+3O
彼女の家に行き、彼女のお母さんに席をはずしてもらって、手筈は整った。
五十鈴「どうしたの?」
彼女には何もおしえていない。ジジイに向けた曲の練習とも勘違いしていた。
俺「そ、そうじゃないんです。1つ聞いて欲しい…ものがあって」
元来人前で喋るのは苦手だったんだよね。でも1つ1つ振り絞って声を出す。
俺「それで、えーと五十鈴さんのために曲を書いたんです!」
五十鈴「え?」
347: イッチー・ブラックモア 2016/11/28(月) 21:28:13.08 ID:fuLAD+3O
俺「今年の初めから書き出して、凄い時間かかっちゃったけど、一生懸命作ったんです!」
バリバリに保険をかけてギターを手に取り歌を歌う。
演奏が終わったときには俺は泣きそうだった。ミスしなかった悦び。想いが届いたかどうかの不安。たった数秒でも俺には凄い時が流れた。
五十鈴「…私ね、嬉しい」
そういって彼女もポツリと話し出した。
五十鈴「…好きなんでしょ?私のこと。でもだめ。盲目だから」

(Visited 23,812 times, 1 visits today)

down

コメントする




シェアする

  • 人気記事

  • 最近の投稿

  •