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ゲーセンで出会った不思議な子の話

time 2021/12/18

ゲーセンで出会った不思議な子の話

208: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 18:58:23.93 ID:WJObiXhX0
一緒に住んでいたり、夫婦の人は、ずっとこういう日が続くのか
いいなぁ、と俺は思っていた。
二人でバカ笑いしながら騒がしくご飯を作っていたから、
妹も母さんも起きてきた。
今日は俺たち二人で作る、と言い張って
妹はテレビの前、母さんは洗濯を始めた。
ああ、普通の生活だなってしみじみ思った。
211: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 19:12:37.51 ID:WJObiXhX0
朝ごはんを食べながら俺は不肖にも
「これは彼女の手料理…」と思いながら食べていた。
朝ごはんを食べたらすぐ家を出る旨を母さんと妹に伝えると
「さみしいねー」「もっといればいいじゃないー」と言われた。
そうしたいのは山々だよ、と俺は悔しかった。
もっと時間があればもっとゆっくりしていた。
この時ばかりは彼女と俺もただただ顔を見合わせるしかなかった。
215: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 19:19:26.60 ID:WJObiXhX0
荷物をまとめて、家を出る。
妹が車を出してくれた。
車に乗って、坂をくだる。妹が、「また来てくださいねー」と言うと
彼女がぼそっと「また来れるかな…」
と言ったのが心を突いた。
何もかも、次があるのか分からない。
彼女自身も、その不安と悔しさと戦っていたのかもしれない。
216: 名も無き被検体774号+ 2012/01/17(火) 19:27:21.15 ID:QFz9wBNO0
>>215
彼女の一言に
胸がむ…
221: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 19:32:21.84 ID:WJObiXhX0
また、特急列車に乗る。2時間ほどの旅。
そこから在来線で1時間ほど。
それほど長い旅ではないのだが、特急を降りた辺りで彼女の様子がおかしかったことには気付いた。
口数が減っていたのだ。
彼女は、自分から弱音を言うことは無い人だから、俺は嫌な予感がしていた。
在来線になると人が多くて座れなくなる。
俺は、途中駅で彼女を下ろした。彼女は「なんで?」という顔をしていたが、
とりあえずベンチに座らせた。
俺「ねえ、大丈夫?様子が変だよ。無理してない?」
224: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 19:37:56.84 ID:WJObiXhX0
彼女「どうして?平気だよ?」
俺「いい?一番大切なのは何よりも体なんだよ?少しでも何かあったら言って」
彼女は悔しそうに言った。
彼女「あのね…少しだけ吐き気がするの…でも本当に少し。
でも言ったら絶対心配かけちゃうと思って…」
俺はやられた、と思った。大袈裟かもしれないが一気に血の気の引いた俺は、
「歩ける?」と聞きつつも彼女を揺らさないように強引におんぶして、改札をぬけた。
彼女は「大丈夫だよ!電車に乗ろ!」と言っていたが、
俺は電車は座れないし人も多いからもうダメだ、と思っていた
225: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 19:43:01.93 ID:WJObiXhX0
彼女を傷つけたらだめ、少しでも無理させたらダメ、そう決めていた俺は一生懸命だった。
もし何かあったら全てオレのせいだ、そう思っていた。
駅を降りて、タクシーを止める。
さすがの彼女も諦めて、
「ごめんね…ごめんね…」と繰り返していた。
俺「急いで、〇〇方面に向かってください!」彼女の自宅だった。
227: 名も無き被検体774号+ 2012/01/17(火) 19:48:12.96 ID:x28GwwOWO
>>225
GJ過ぎる
228: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 19:48:38.09 ID:WJObiXhX0
この時、タクシーの運転手がすごく良い人だったのが印象的だった。
彼女のことを車酔いか酒酔いをした人だと思っていたのか、
水飲む?といってペットボトルくれたり、
近道しますよ、といって渋滞の抜け道をしてくれたり。
初老の白髪のじいちゃんだったのだが、動転して入ってきた俺をなだめ、
落ち着かせてくれた。終始Jリーグの話をしていて、お若い方だった。
彼女はタクシーの中で涙目だった。俺はずっと肩を抱いていた。
窓を開けて車で走っているウチに、彼女の口数も増えてきて俺は安心していた。
232: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 19:58:35.96 ID:WJObiXhX0
彼女の家につく頃には、彼女にはだいぶ笑顔がもどってきていた。
俺は胸をなでおろした。
彼女はフラフラ歩き出した。
俺「こら、そんなに焦って歩いちゃダメだよ」
彼女「ここが、我が家です!でもどうせ呼ぶつもりだったから」
と笑って玄関先に立ってみせた。
俺は彼女の父さんと母さんに事情を話した。逐一電話報告もしていたが、
叱られることも重々覚悟の上だった。
しかし、ここまで一緒に来てくれてありがとう、と言われた。
とても、申し訳ないことをしてしまった気持ちになった。
234: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 20:06:36.62 ID:WJObiXhX0
大事をとって、彼女は少し横になって休ませることにした。
「富澤とわたしの母校に行くのー!」と言ってきかなかったが、
一番大事なのは体調だ。決まってる。
みんなで説得して、なんとか彼女を寝かせた。
そのかわりに俺は彼女が目覚めるまで家にいて欲しいと言われ、家にいることになった。
しばらく彼女が部屋で寝ているのを見守っていたが、居間におりて
彼女のお父さんとお母さんと話した。
239: 1 ◆WiJOfOqXmc 2012/01/17(火) 20:15:22.69 ID:WJObiXhX0
空気は重かった。あまり話すことも見当たらないんだ…
とりあえず俺は、今日はすいません、と真剣に謝った。
母「気にしないでね。」
父「君はいつもいつも、娘の病室にやってきてくれるね。
君が来てくれるから、あの子はいつも本当に楽しくやっていられる。
謝りたいのは、ろくに何もできないこっちだよ。」
俺は、黙っていた。何を言っていいかまったく思いつかなかった。
母「あの子、本当にいつもいつも富澤君のこと話してくれるのよ。
富澤くん、私にもよくマメに連絡くれるでしょ。本当にありがとうね」
真面目な話はこれくらいだった。そのあとは、それを忘れたいかのように
テレビを見ながら、他愛もない世間話をしていたと思う。

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