おはなしカフェ

ある日、玄関の取っ手部分に異臭を放つ袋が下がっていた…

time 2022/12/29

ある日、玄関の取っ手部分に異臭を放つ袋が下がっていた…

826: 702 2009/01/16(金) 18:32:02 ID:l6dqWWzlO
Y太からの説明が終わっても、私は何も言葉を発することが出来ませんでした。
深夜に鳴るチャイムに怯える私のために、よく泊まりにきてくれたK助。
彼は車で来るので、チャイムを鳴らしに来たI子も、自分が脅している
その部屋に、K助がいたことには気付いていたはずです。
白々しく私を抱きしめ慰めるK助を思い、I子はどんな気持ちでドアを
叩いていたのでしょう。
私は哀れでなりませんでした。
こんな酷いことをされながら、まだ私への嫉妬で私を睨み付けてくる
目の前の女の子も、黒幕である男に縋って支えられて、あまつさえ
まんまと策略にひっかかり、結婚まで考えていた自分も。
黙りこくる私に、一度は大人しくなったI子がまた叫びだしました。
「あんたのせいで」「あんたがいなければ」
私はまた顔なり手なりを力一杯引っ掛かれたのですが、やっぱり痛みは感じませんでした。
主役不在のまま、人生初の私の修羅場は過ぎていきました。K助が憎かった。

831: 702 2009/01/16(金) 18:44:06 ID:l6dqWWzlO
私は結局何も言わないまま、その場をあとにしました。
I子はまだ泣いていて、Y太はひたすら謝っていました。
その帰り道、私はK助に電話をして、次の日に会う約束を取り付けました。
「大事な話があるの」と、明るい声で言ったせいか、K助は何か
都合のいい勘違いをしたようです。それでもいいやと思いました。
もうどうだっていいや。そんな感じでした。

そして次の日、K助を呼び出したレストランで、私はK助にプロポーズをされました。
この4年間、もう何度も聞いたあの台詞です。
「結婚しよう。愛してる。これからもずっと、お前を愛してる。
俺がお前を一生守るから」K助を愛していました。K助も私を愛してくれていて、いつかは
2人で新しい家庭を作るんだと考えていました。
クリスマスにプロポーズをされたときは、次にプロポーズをされるとき
こんなことになってるなんて、考えもしなかったのに。
私はにっこり笑ったつもりでしたが、うまく笑えませんでした。
咳をしようと思ったら、口から出たのは泣き声でした。
泣き出した私をK助はどう解釈したのか、「この2ヶ月くらい、
お互いに辛かったと思うけど、俺の覚悟はわかってくれたと思う。
この先何があっても、俺がお前を守る」
K助が言い終わった瞬間、私は彼の顔を思いっきりはたきました。

847: 702 2009/01/16(金) 19:03:58 ID:l6dqWWzlO
ラストです。

K助が驚いたようすでこちらを見ているのを無視して、私は店を出ました。
店の外には、事前に打ち合わせた通りY太がI子を連れて待っていました。
また頭を下げるY太。しょぼくれた顔のI子。K助が私を追い掛けて
外に出てきて、私たち3人の顔を見て唖然とし、そしてすべてを悟ったのか
急速に青ざめました。
「K助さん」と呼び掛けるI子を無視してK助は私に向かい、「違うんだ」と
叫びだします。
「話を聞いてくれ」「こいつが勝手にやったことなんだ!」
I子は泣き出し、Y太はK助に殴りかかります。K助はY太に殴られながらも、
「違う」と狂ったように叫んでいました。
私はその様子を、何をするでもなくただ眺めていました。
私の4年間って、こんなものだったんだ、とだけぼんやりと考えていた気がします。

Y太に胸ぐらを掴まれているK助に、「4年間ありがとう。
もうあなたの声も聞きたくないです。さよなら」
とだけ言いました。誰かが何か言った気がしましたが、何も
聞かなかったことにしてそのまま1人で帰りました。
涙も出ませんでした。ただ喪失感だけが私を支配していました。

以上、1年前の出来事です。長い上に大した修羅場にならなくてすみません…。
支援ありがとうございました!

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