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ホームレスにギター教えてもらった話

time 2021/12/16

ホームレスにギター教えてもらった話

189: 2016/11/22(火) 20:30:02.38 ID:qljtUMUh
ジジイ「で?何から聞きたい?」
珍しくジジイからの質問。いや下らない質問は嵐のように受けたけど…
俺は経歴を追うことにした。
俺「生まれは?」
ジジイ「満州じゃ」
俺「は?」
ジジイは戦前の満州で生まれたらしい。戦争中に日本に来たという。
ジジイ「だからって俺は支那人でもねえぞ?根っからの日本人や」
ジジイはいつものおしゃべりになったがどこか面持ちが違った。ああこれは裸のマジの付き合いなんだなとガキながらに感じた。
190: 2016/11/22(火) 20:34:37.02 ID:qljtUMUh
ジジイ「頑張って大学まで行った。何回も消えたがましかと思ったが人生は楽しかった」
もはや質問はいらない。俺は黙って粛々と聞いた。
ジジイ「卒業して就職した。国鉄に入った。日本の立ち直りを支える誇りを感じながら仕事をしちょった」
ジジイ「その時くらいやな。日本に海賊レコード言うてな?アメリカのが入ってくんねん」
ジジイ「俺は音楽が好きじゃったけえしっかり買った。それにはアメリカの最新の音楽がつまっちょった」
193: 2016/11/22(火) 20:38:34.05 ID:qljtUMUh
ジジイ「あの子がお前に持ってきたこともあるやつや」
あの子は五十鈴を指していた。その時ロックの歴史ってことで色々借りたのを思い出した。
ジジイ「俺はチャック・ベリーに心をうたれた。感動した。俺はこういうのをやらないかんち思うた」
ジジイ「しかしなあ、ギター揃えていざっゆうてもな海賊レコードはな、音質が悪すぎるんや」
ジジイ「ザッザッ言うしな?それで最初は諦めた。お前とおんなじや」
そういってにっこり笑った。
194: 2016/11/22(火) 20:42:58.86 ID:qljtUMUh
ジジイ「俺はお前よりもっとひどいぞ?それから3年もギターには触れんかった」
意外だった。ギターが大好きだと言っていたジジイの話とは思えなかった。
ジジイ「しかしなあ、昭和の40に入るとな、周りにちょこちょこギターをするやつが出てきた」
ジジイ「その時に俺の嫌いな同僚がギターをこうたっち聞いた。これはやるしかないと思った」
なんか…ほとんど俺と同じきっかけな気がするんだが?言いたくてしょうがなかったがまだこらえた。
234: 2016/11/24(木) 01:13:14.69 ID:DX2dcY/Q
ジジイ「やっぱり弾けね。絶対ひけないと思った」
ジジイ「それでもしっかり練習した。1日仕事以外はギターにぎっとったわ」
このジジイが真面目に練習?それだけで俺には不思議な感覚だった。
ジジイ「それでなある時レコードと同じように弾ける俺がいた」
238: 2016/11/24(木) 01:21:46.57 ID:DX2dcY/Q
ジジイ「といっても原曲の早さはすごかった。チャック・ベリーは意外とはやびきだぞ?」
またそしてにやっとした。仕事以外って国鉄って忙しいんじゃねえの?ガキの俺にはぼやっとした思いしかなかった。
ジジイ「それからちょっとして海外出張があった。行き先はイギリスだった」
俺の脳裏に不意によぎったあるバンド…
俺「ちょっと!それ何時の話?」
ジジイは笑って言った。
ジジイ「昭和36の冬から37の春。西暦は…」
ジジイ「1961年から1962年やな」
240: 2016/11/24(木) 01:26:24.74 ID:DX2dcY/Q
俺「もしかして見たんか?」
ジジイは顔をゴシゴシ。話をじらすな!
ジジイ「見たさ。ビートルズにたまたま来てたマディも見たさ」
マディ?そんなのは知らなかった。ビートルズを見たという衝撃。しかもデビュー前だと…?
マディとはマディ・ウォーターズのことでこの話を後に五十鈴にするとそっちの方を羨ましがっていた。

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